心霊学研究所
kaleidoscope
('99.12.17作成)

困難があるから面白い
『STAR TREK 7 / GENERATIONS』より


 

 『シルバーバーチの霊訓(5)を読む』九章の補足的な内容です。

 霊訓を読む・九章の中で「私たちは永久に物質の世界に住み続けるのです」というのを、まるでそれが悪いことであるかのような書き方になってしまっていますが(^_^;ゞ「そういうわけではない」ということを、僕の趣味を100%まじえて、説明したいと思います(^^;

 

 '96年の正月に公開された映画『スター・トレック/ジェネレーションズ』、ここに来られる人にはファンのかたが多いので(^^)、ご覧になったかたも多いことと思います。が、もしもまだ見てなくて、そのうちビデオか何かで見ようと思っている人は、ここから先はネタバレですので(^^;読まないで下さい。なお、引用部分は全て、映画ジェネレーションズのノヴェライズ「宇宙大作戦スター・トレック7 ジェネレーションズ」(早川書房)からです。

 

 まずはストーリーの紹介からいきましょう。
 宇宙船エンタープライズ(D)のピカード艦長は、ソラン博士の陰謀を阻止するために、78年前にエンタープライズ(B)を救って死んだと思われていたジェイムズ・カークに会いに行きます。そこは<永遠の楽園(ネクサス)>、愛と幸福に満ちた夢幻の世界。カークは、宇宙に放り出されたとき、エネルギー・リボンに巻き込まれて『ネクサス』に入り込んでいたのです。

 ピカードはカークに、協力してほしいと頼みます……。

 

「カーク艦長」ピカードは必死に訴えた。「あなたの力が必要です。<永遠の楽園(ネクサス)>を離れて、わたしといっしょに来ていただきたい」(P.286)

 

 しかしカークは、この楽園で人生をやり直すことを望んでいました。懐かしい恋人、現実の世界では別れてしまった、かつての恋人に、現実の世界ではしなかったプロポーズをして、今度こそ幸せな家庭を持ちたい……。そして、ピカードの話には耳を貸さず、愛馬とともに草原に駆け出します。

 

 ピカードはカークの後を追った。/遠くにカークの姿が見えた。/やがて谷の淵まで来ると、馬はヒラリと弧を描いて谷を飛び越え、後脚をかろうじて淵の端に乗せて降り立った。
 カークは着地と同時に速度を落とし、やがて完全に立ち止まると、飛び越えたばかりの峡谷を振り返った。そして顔をしかめ、馬の向きを変えると、グンと勢いをつけてぶたたび峡谷めがけて馬を走らせた。
 カークはもう一度、谷を飛び越えた。だが、今度は即座に馬を止めて、また顔をしかめた。/
 カークはふたたび峡谷を振り返った。例の夢心地の笑みは消え、悲しみと困惑の混ざった表情を浮かべている。
/「おれは、この谷を今までに五十回は飛び越えたが……」やがてカークは静かに話しはじめた。
「何度飛んでも、いつだって冷や汗が出るほど怖く感じた。それなのに今は怖くない。つまり……」カークは言いよどんだ。いかにも、その先を口にするのが辛そうだ。「……これが現実ではないからだ」(P.289)

 

 カークは、如何に心地よくても、それが実体を伴わない世界の幻影に過ぎない事に気付き、言い知れぬ虚しさを感じます。そして本当にやりがいのある仕事……現実の世界の困難な仕事に赴く決心をします。

 

 カークは小さく、あきらめの溜息をついた。「ここにスポックがいたら、きっと、こう言うはずだぞ。「このような任務に進んで出かけるとは、やはり、非論理的な地球人ですな」とね」カークはパッと顔を輝かせ、にやりと笑った。「しかし面白そうだ」(P.292)

 

 確かに物質の世界は不自由です。たくさんの制約があり、足枷があり、思い通りに行かないことや、困難が降り懸かってきます。しかし、だからこそ面白いのではないでしょうか。だからこそやりがいがあるのではないでしょうか。Mr.スポックに言わせれば、まさに「非論理的」なんでしょう(^^;。しかし、なんでも簡単に願いが叶うとしたら、こんなに退屈な事はないはずです。

 シルバーバーチは、人生は比較対照の中でいとなまれると言います。苦しみがあるからこそ喜びが分かる、暗闇があるからこそ、光明の有り難さが分かるのです。

 この物語の中でカークが悟ったこと、永遠の楽園よりも困難な現実こそ「面白そうだ」ということは、シルバーバーチとは、たしかに言葉の使い方こそ違います。が、このエピソードには、シルバーバーチの言葉と同じテーマがこもっているのではないかと思います。

 

……っと、ほとんど趣味に走ってしまいましたが、如何だったでしょうか? 『STAR TREK 7 / GENERATIONS』、映画も小説版も、涙無しには見られない、素晴らしいデキです。ぜひご覧下さいませ(^^;

初出:Nifty-Serve FARION『心霊学研究所』('96.2.26)


目次次ページ

心霊学研究所トップページ