心霊学研究所
小桜姫物語
('04.04.05)

七十八.神々の受持ち


 

 神々の受け持ちとはいっても、私がこちらで実際に見たり聞いたりしたことを、何の手心も加えずにありのままにお話しするだけですから、どうぞそのつもりで聞いてくださいね。こんな話でも少しでも皆様のお役に立てば何よりです。

 現世の方々が、何はさておいても一番に心得ておかなければならないのは、産土《うぶすな》の神様でしょう。これはつまり土地の守護に当たられる神様でして、その本体は始めから生き通しの自然霊、つまり龍神様なんです。現に私たちの土地の産土様は神明様(訳注1)といいますが、やっぱり龍神様です。どうやらこちらの世界の仕事は、人霊のみでは何かにつけて不便があるのではないかと感じられます。

 さて産土の神様の仕事の中で何より大事なのは、人間の生死の問題です。この世の役所では、子どもが生まれてから初めて出生届を受け付けますが、こちらでは生まれるよりずっと以前から、それがおわかりになっていらっしゃるようです。何といいましても、一人の人間がこの世に生を受けるというのはすごく重大なことですから、このような場合は産土の神様から、上の神様、さらに上の神様へと順々にお届けがあり、最終的に最高の神様まで情報が伝達されるんだそうです。言うまでもなく、これから誕生する人間には必ず一人の守護霊がつけられますが、これも皆上の神界からのお指図で決められるように聞いています。

 それから人間が亡くなる場合に第一に受け付けてくださるのも、やはり産土の神様で、誕生だけが決してその受け持ちではないんですよ。これは氏子としてぜひ心得ておかなければならないことと思います。とは言ってもそのお仕事はただの受け付けだけで、直接帰幽者をお引き受けくださるのは大国主命《おおくにぬしのみこと》様です。産土神様からお届けがあると、大国主命様の方ではすぐに死者のあらゆる状況を見定め、それぞれ適当な指導役をつけて下さるんです。指導役はやっぱり龍神様ですね。人霊ではどうかすると人情味があり過ぎて、こちらの世界の指導をするのにあまりうまくいかないようです。私も一人の龍神さんの指導にあずかったことは、先ほど来お話してきたとおりです。これは私だけのことではなくて、どんな人だって皆お世話になるんですよ。つまり現世では主として守護霊、幽界では主として指導霊のお世話になるものと思われたら間違いありません。

 ちなみに生死以外にも産土神様のお世話になることも多いですね。すなわち産土神様は、万事の段取りを取ってくれる総合受付のようなものと言えばお分かりいただけるかしら。病気には治療専門の神様、武芸には武芸専門の神様がいるし、そのほかこの世のありとあらゆる分野には、それぞれ受け持ちの神様が控えていらっしゃいます。人はとかく自分の力だけで何でもできるように考えがちですが、多かれ少なかれすべての事象の陰には神様のお力添えがあるというわけなんです。

 さすがに日本は神国と言われるだけに、外国と違ってそれぞれ名の付いた尊い神社が至る所にあります。それらの御本体を考えてみますと、大きく二通りに分かれるようです。一つはすぐれた人霊を御祭神としたもので、橿原神宮《かしはらじんぐう》(訳注2)、香椎宮《かしいのみや》(訳注3)、明治神宮(訳注4)などがこれにあたります。もう一つは活き神様を御祭神としたもので、出雲大社、鹿島神宮、霧島神宮などが相当するようです。ただしいかにすぐれた人霊でも、その背後には必ず有力な龍神様が控えているようですけど。

 今さらお話しすることでもないんでしょうが、すべての神様の上には皇孫尊《こうそんみこと》様が控えておられます。このお方が大地の神霊界の主宰神であられるからです。さらにそのもう一段階奥には、天照大神様がお控えになっておられますが、それは高天原《たかまがはら》、すなわち宇宙の主宰神でありまして、とても私たちからは計り知ることのできない、それはそれは尊い神様なんです。

 神界の組織はざっとではありますがこのような構造です。これらの神様の他にもこの国には、観音様とか、不動様といった様々な神様がいますが、私がこちらで実際に調べてみますと、それはただ進化の途中の相違、つまり幽界の下層にいる眷族《けんぞく》が色々区別しているだけで、奥の方は結局同じなんです。富士山に登るのにルートは色々あっても、頂上が一緒なのと同じです。教えの道も結局はそういうものなんでしょう。話がずいぶん長くなりましたわね。それではこの辺でひとまず私の通信の終わりとさせてくださいね。

(完結)

訳注1:昨年9月スピリチュアリスト掲示板でゆきたろうさんが「小桜神社は現在は諸磯神明社といいいます。」とご指摘くださいました(2885)。本文を見ると、昔は別だったものが今は一つになったのかもしれません。(訳者注)

訳注2:大和三山のひとつ、畝傍山《うねびやま》の東南ふもとに広大な神域をもつ。第一代神武天皇が橿原宮に即位したという『日本書紀』の記事にもとづき、明治23(1890)年に創建された。(http://www.kintetsu.co.jp/senden/Database/KA-Htm/KA0006.html) 祭神は、神武天皇・媛蹈鞴五十鈴媛《ひめたたらいすずひめ》皇后。(大辞林第2版より)

訳注3:『記紀』にこの地(福岡県福岡市)の「橿日宮」で崩壊したと伝えられる仲衰《ちゅうあい》天皇と、神功皇后を祀る。一説に200年代の建立ともいわれ、古代から朝廷に崇敬されてきた神社。江戸時代に再建された本殿は、香椎造りと呼ばれる独特の様式。 (http://www.yado.co.jp/tiiki/fukuoka/kasiigu/kasiigu.htm

訳注4:http://www.meijijingu.or.jp/

 


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