有名人の霊は本物の高級霊？

書店などに行くと、昔の聖人や哲学者、天使など、有名人の霊が出てきたと称する霊言集がいろいろと出ているようです。やはりそうした高級霊たちは今でも地上のために働いてくださっているのだと、とても有り難い感じがします。中には偽者もあるのかも知れませんが、本物もたくさんあるはずです。だって、地上で名を成した偉大な人たちが一人も霊媒を通じて出て来ないとは考えられませんし、出てくるなら名前ぐらい名のって当然、というか、むしろ名のらないほうが不自然でしょう？

とんでもない。高級霊が地上時代の名前を喜んで口にするなど、絶対にあり得ません！

特に霊的真理を伝えるために現われた霊であれば、それが高級霊であればあるほど、また地上時代に有名であればあるほど、その名前を名のる可能性は少なくなります。シルバーバーチなど、バーバネルを通じて現われていた60年の間、何度聞かれても一度も地上時代の本名を名のることがなかったほどです。（逆に言えば、明かせないほどの有名人だったかも知れないわけですが……誰も知らないような人だったら言ってもどうということもないわけですから）

もちろん有名人といってもいろいろで、一概には言えません。有名だったけれども低級霊ということもありますし……その場合は「我こそは誰々なり」とばかりに得意満面で名のるかも知れません。また、比較的最近の人物で、地上時代の知り合いがまだ存命の場合など、名のることそのものが霊界の存在の証明となり得る場合は名のってもおかしくありません。しかし、それは“霊的真理を伝えるために現われる高級霊”とは別ケースとして考えるべきでしょうね。

では、なぜ高級霊は地上時代の名前を名のらないのでしょうか？

まず、基本的にそういう情報というのは、低俗な興味本位のものでしかないということです。その霊の身元が何であろうと、誰であろうと、語られる内容の価値とは関係ないのです。シルバーバーチは自分の名前を聞かれるとこう言ったそうです。----「それを知ってどうしようというのです？　もしも歴史上の有名人だったら有り難がり、どこの馬の骨かわからない人物だったらサヨナラをなさるおつもりですか」----低俗な好奇心を満足させる情報を与えても百害あって一利なしですから、高級霊がそういう情報を与えることはありません。

また、名のった場合のメリットとデメリットを考えてみても良いでしょう。例えばイエスとか、釈迦とか、孔子にソクラテス、ミカエル……そんな名前を名のる霊が出てきたら、マトモな理性を持った人間なら疑いますよね。本当に本物なのか？……証拠は？　と言っても何百年も何千年も前の人間が証拠なんて出せるはずがありません。疑念ばかり膨らみ、そちらにばかり興味が行ってしまって、肝心の霊的真理の話はどこかに行ってしまうことでしょう。もしかしたら名前を出すことで多少は注目を集めることはできるかも知れませんが、結局本当に注目されるのはその人の名前であって真理ではないことでしょう。その程度のメリットと引き換えるにしてはあまりにもデメリットが大きいように思われます。

それに、論理的に考えてみてください。霊界に行ってからも彼らは数百年、もしくは数千年も学び続け進歩し続けているハズです。また、そうして地上時代を遥かに凌駕するほど進歩できる人でなければ偉大な存在とは言えないでしょう。そうであれば、わざわざ霊界から降りてきて、そんな大昔の、未熟だった時代の自分の業績や名前など語る気になるでしょうか？　霊界で何百年も学んだ素晴らしい霊的真理を伝えに来ているのに……自分の名前を言えば聞き手の興味がそちらに行ってしまうのは分かっているのに……それでも自分の名前を言いたくなってしまうとしたら、地上時代のレベルに停滞していて未だに自己顕示欲が抑えられないのだという以外に、いったいどんな理由があるのでしょう？　そんな程度の存在が、果たして高級霊と言えるでしょうか？　果たして我々が教えを請うに足る存在と言えるでしょうか？

霊界で数百年も過ごした存在からこの世を見ると……いまこれを読んでいるあなたが、仮に現在の十分の一の年齢のときのことを思い返してみてください……高級霊たちとこの世の人間との間には、それと同等か、おそらくそれ以上のレベルの違いがあるはずです。本当の高級霊界から見たら、この世など霊性進化の学校の小学校か幼稚園レベルに過ぎないわけです。本物の高級霊であれば、その小学校レベルの地上世界での名声を自慢げにひけらかすはずがありません。たとえ事実であったとしても、神様やイエスなどの有名人の名前を言うはずがありません。

立派な社会人が小学校のときに学級委員だったことを自慢しているようなものです。普通は、そういうアホな自慢話をする人なんか尊敬できませんよね。なんで宗教・精神世界では、そういう霊がありがたがられるんでしょう。……ホント、不思議な世界です。