心霊学研究所
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書 名
裸のサイババ〜僕らの外側に「神」をみる時代は、終わった
著 者
パンタ笛吹
出版社
VOICE
定 価
1600円(税抜き)
発行日
2000/12/11
判 型
四六判上製
ページ数
276ページ
ISBN
ISBN4-900550-94-9
評 価
★★★

 

サイババと言えば説明の必要もないニューエイジ・精神世界のビッグスター。しかし、聖人の仮面の下には恐るべき素顔が……という、言ってみれば暴露本なのだが、これはいろいろな意味で面白い本である。

この本の著者のパンタ笛吹氏、何だか変な名前だが、これはもちろんペンネーム(いかにもニューエイジャーらしい名前と言うか(^^;)。ニューエイジの世界では結構有名な人のようで、以前はサイババを賛美する本も出している。出版社のVOICEもニューエイジ書籍出版やニューエイジ関係のイベントで有名な会社で、サイババのアシュラムを訪ねる(とんでもなく高額の)ツアーを主催したりもしているらしい。そのパンタ笛吹氏とVOICEがサイババの暴露本を出すというのだから穏やかではない。パンタ氏の言によれば……

もしこの手紙の筆者が書いている(引用者注:サイババのセックス・スキャンダルについての)ショッキングな訴えが事実であるならば、僕は自分の書いた本を読んでサイババを信じるようになった方々に対して、責任があるような気がした。

とのことなのだが……。

パンタ氏の真意の詮索は後ですることにして、肝心のサイババである。物語は南イギリスのグラストンベリーから始まる。そこで開かれたミステリーサークルの学会に出席していたパンタ氏は、『The Findings』と題するサイババを告発する小冊子を目にし、その内容に衝撃を受け、その真偽を確かめるために世界中の証言者を訪ね歩くことになる。その過程で明らかになっていくサイババの真実の姿は、まさに慄然とするものだった。

有名なビブーティーなどの物質化現象のトリックを手始めに、サイババの幼児嗜好、少年への性的虐待(年端もいかぬ少年にオーラルセックスを強要したり……)、強姦(7歳の少年への肛門性交……痛ましい)。貧しい人を無料で治療しているはずのサイババ病院で臓器売買が行われていること、等々。そこに見えてきたのは喧伝された“聖者”とは全く逆の姿。弱者を食い物にし、私腹を肥やす亡者の姿だった!

世界中の被害者を直接訪ねてインタビューしているのには素直に脱帽するほかないだろう。また、それぞれの証言者の誠意も感じられ、さらに含蓄のある言葉も引き出されており、なかなか良いインタビューと感じた。トラウマから逃れ、さらに前向きに活きようとする人々の姿には、感動すら覚える。また、これだけ次々と被害者の証言が出てくると、さすがに迫力があるし、説得力も感じられる。

僕も物質化現象のトリック映像はずいぶん以前に見たことがあったし(この本では今回が本邦初と言いたげだが、もちろんそんなはずはない。著者はこの点に関しては知っていて嘘を言っていると思う)、そもそも一目見れば胡散臭いことは判ったので、幸いなことにサイババを信じたことはない。が、同性愛疑惑をはじめ、この本で告発されている悪事の数々……いくら何でもここまで酷いとは思っていなかった。この本はサイババを信じているような人は必ず読むべだろう。

サブタイトルに「僕らの外側に「神」をみる時代は、終わった。」とあるが、事実、一人の聖者を崇め、崇拝する時代は、スピリチュアリズムの登場とともに終わっているのだ。このような本によって、サイババのごときインチキ教祖の勢力は一歩でも後退してほしいものである。

但し、落とし穴は最後----あとがきの部分----に待ちかまえていた(^^;。「もう高額なセミナーに通わなくてもいい」「実践的な家庭学習キット」と称する『エンジェル・ボックス』とか言うものを48,000円で売り出しているのだ。要するに「外側に神を求めるのは終わった」から「内側に見つけるためにこれを買いましょう」ということなのだろう。さすがパンタ笛吹、さすがVOICE、さすがニューエイジ、最後の最後に商魂逞しいことだ。だいいち、この値段はどう考えてもゼロが一つ多いだろ(^^;。こんなお菓子のおまけみたいなもん。

いろいろと調子のいいことは言っているが、要するに48,000円が売りたいんだな〜というのが透けて見えてしまう。サイババでは稼ぎ切ったから、最後に告発本でもひと儲けという魂胆も(^^;。なるほど、嘘をついてまで本邦初に拘るわけだよなぁ(^^;。

そんなわけで、これさえなければ4つでも良かったが、まぁ、3つに格下げというところか。サイババに興味があれば必読。無くても、とりあえず読む価値はあると思う。


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