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浅野和三郎と言えば、言わずと知れた日本スピリチュアリズムの父。本書はその浅野和三郎の昭和3年(1928年)の著作。1985年に潮文社から本文復刻版として再刊され、現在手に入るのは1999年に新装されたもの(内容は同じ)。 “本文復刻版”と言えば聞こえは良いのですが、要するに現存する本の現物を版下に使うという荒技で本を作っているわけです。なんでそんなことをするかというと、歴史的著作の資料的価値を尊重して……などではなく(^^;、単純にコストの問題。そりゃあそうですよね、600ページもある本を入力し直していたら、SOHO志望の主婦を騙してページ1,000円でやらせても60万円以上かかってしまう(^^;。まして'85年では活字を組んでいた時代ですから、もっとかかったでしょう。とても採算が合わない。スピリチュアリズムの本が売れる数なんて知れてますから。 ですから、このように経費を切りつめた形での出版でも文句は言えなくて、浅野和三郎の歴史的著作が手軽に手に入れられるだけでありがたい、のですが……でも、一個だけ文句言うよ。「版下には書き込みのない本を使ってくれ〜」(^^; 書き込みといっても誤植を補う程度のものですが、汚い字なのでみっともないです。だいいち、自分で書いたものだと思われそうで、こんな本は他人に貸せません(ちょうど印刷の具合で(?)万年筆か何かで後から書き込んだように見えるんですよね〜(^^;)。ま、どうでもいいですが。 閑話休題。真面目に書評に移ります(^^)。 大部なだけあり、非常に充実した解説書です。これだけ分厚いと「入門書」とは言い難いほど(^^;。 内容的には、スピリチュアリズムでも特に現象面に限定して、ありとあらゆる事象の紹介と解説がされています。霊的現象に関しては、物理的現象・精神的現象の如何を問わず網羅していると言って良いでしょう。初期に行われた催眠術から説き起こし、テレパシー、霊聴現象、直接談話現象、物質化現象、アポーツ、テーブル浮揚現象、サイコメトリー、十字通信、自動書記、直接書記、霊言、心霊写真、エクトプラズム、等々、これだけ読めば、現象面に関してはほぼパーフェクトでしょう。もちろん70年も昔の本ですので、その後盛んになった霊的治療などに関する記述は物足りない部分もありますが、こと物理現象に関しては、現代の研究者の仕事と比べても決して劣るものではない----というより、残念ながら現代においても、この書を超える仕事は(日本では)現れていないかもしれません。この分野について知りたいなら、まず目を通して損はないと思います。 もちろん、有名な霊媒や研究者もほとんど紹介されていますし、心霊実験会の様子もよくわかりますし、スピリチュアリズムの歴史も概説されています。それらについて知りたい人なら、非常にためになる内容だと思います。また、わずかではありますが、モーゼスの『霊訓』、ワードの『死後の世界』などの霊界通信も紹介されています。(シルバーバーチの霊訓は出ていません。当然ですけど) ただし、注意点が一つ……。
このように浅野自身が言っているとおり、スピリチュアリズムの思想的・哲学的な面は、この本では意識的に避けられています。そうした面を期待して読み始めると、何百ページ読んでもそういうことが一行も書かれていないのに気づかされることでしょう。後に書かれる『心霊研究とその帰趨』などの思想面の解説書とセットで読むと良いかもしれません。 惜しむらくはその古さ、ですね。内容の古さは特にこだわらねば気にならないレベルですが、文語体の取っつきづらさは否めません。僕は比較的読み慣れている方だと思いますが、それでも読むのに現代文の本の倍の時間がかかりました。読みづらさは、即ち理解度の低下に直結します。読んでみたが頭に何も残らなかったという可能性もありますし、全ての人にお勧めできないのが残念です。 |