心霊学研究所
『小桜姫物語』浅野和三郎著
('02.04.01公開)

十四.守護霊との対面


 

 第一期、すなわち岩屋での修行中に体験した主な事柄については、以上で大体お話してしまいましたが、あと一つだけぜひ付け加えておいたほうがいいと思うのは、私の守護霊のことです。誰にでも一人の守護霊がついていることは、心霊を志す方ならご存知のことと思いますが、私もご多分にもれず一人の守護霊がついていました。そしてその守護霊との関係は、現世の間だけにとどまらず、肉体の死後も引き続いて切っても切れない因縁の絆《きずな》で結ばれているんです。もっともこんなことがわかってきたのはよほどたってからで、帰幽当時の私なんかは、自分に守護霊なんてものがついてくれているのかいないのかさえ全然わかっていませんでした。そんなわけでこちらの世界で初めて自分の守護霊にお目にかかったときはずいぶん意外に感じたものですから、その時の印象は今でもはっきり脳裏に刻まれているんです。

 ある日ご神前で、いつものように深い精神統一状態に入った時のことです。突然一人の小柄な女性が眼の前に現れ、優しげににっこりと微笑まれました。見たところ年のころは二十歳あまり、丸顔でさして器量がいい方ではありませんが、どことなく気品が感じられ、雪のように白い富士額《ふじびたい》にくっきりと黛《まゆずみ》が描いてありました。服装は私が生きた時代よりもやや古く、太いひもでかがり縫いをした広袖の白い着物をまとい、下半身には緋色の袴をはいているところは、どう見ても御所に宮仕えをしている方のように思われました。

 意外なのはこのとき初めてお目にかかった私にとっては全然面識のない方なのにもかかわらず、私の胸になんともいえぬ親しみの気持ちがむくむく湧いてきちゃったことです。それにその物腰、表情がいかにも印象深く、彼女は丸顔に対し、私は細面、彼女は小柄なのに対し私は大柄と言うように見た目はあまり共通点がないにもかかわらず、どことなく二人は似通っているんです。つまりうわべは似てないのに中身が似ているという不思議な似かたをしているのでした。

『あのー、どなたでしょうか。』

 ようやく心を落ち着けて、私のほうから尋ねてみました。すると彼女は相変わらずにこやかに微笑みながら言いました。

『あなたは何もご存じなかったでしょうが、実は私はあなたの守護霊、あなたの身の上の事柄は何でもよく知っているものです。時期が来てなかったので今まで陰にひかえていましたが、これからは何でも話し相手になってあげますよ。』

 私は嬉しいやら、不思議な感じやら色々複雑な思いを抱いて、魂の親の前に初めて自分を投げ出したのでした。それはちょうど幼い頃に生き別れた母子が、何かの弾みで再会したような感じといえばおわかりいただけるかしら。とにかくこの出来事は私にとってほんとに思いがけない、また意義深い体験でした。

 激しい興奮からさめた私は、守護霊に向かっていろいろな質問を浴びせ、それでも腑に落ちないことは、指導役のおじいさまにも根掘り葉掘りうかがいました。それで守護霊の素性はもとより、人間と守護霊の関係、その他についておおよそのことが何とか理解できたんです。あのー、それをすべて残らず話せとおっしゃいますの。わかりました。これも道のためならば、知っている限りのことは残らずお話いたしますわ。話がすこし堅苦しく、説教くさくなるかもしれませんが、なにとぞ大目に見てくださいね。それから私の言うことにどんな間違いがあるかもしれませんが、そこはあくまで一つの参考ということでお許しください。私はただ神様や守護霊さまから聞いたことをお伝えするだけです。誤りがないなどと言うつもりは毛頭ありませんので。

 


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