心霊学研究所
『小桜姫物語』浅野和三郎著
('02.04.12公開)
なるべく話の筋道がとおるように、私が長い年月をかけて会得した守護霊についての知識を、まとめて順序良くお話したいと思います。話を始めるにはまず、神様と人間の関係から理解してもらわなければなりません。 諺《ことわざ》に『人は祖《そ》に基づき、祖は神に基づく』といいますが、こちらの世界に来てみて、この諺がいかに正しいかということに気づきました。神というのは人間がまだ地上に誕生していなかった時代から存在していた生き神、あなた方がおっしゃるところの『自我の本体』、すなわち高級の『自然霊』なんです。恐れ多いのですが、わが国の御守護神であられる邇々芸命様《ににぎのみことさま》に従って降臨された天児屋根命《あまのこやねのみこと》、天太玉命《あまのふとだまのみこと》などという方々も皆そうした生き神様で、今でも昔と変わりなく地の神界でお働きになられています。その正体は白く光った球体ですが、よほど真剣な気持ちで深い統一状態に入らなければ、私たちでもそんな姿を見ることはできません。ましてや人間の肉眼になど映る心配はないんです。もっともこの球の形はじっとお鎮まりになっているときのお姿でして、いったん活動を始めますと、色々な神々しい姿に変わられます。さらに激しいお力を発揮されるような時には、荘厳というか雄大というかとても筆舌に尽くしがたいあの恐ろしい龍の姿となられるんです。一つの姿かたちから他の姿に変身するときの迅速さは、肉体に縛られた地上の人間には到底想像できないほどなんですよ。 もちろんこれら元々の生き神様からは沢山の御分霊、すなわちお子様がお生まれになり、その御分霊からさらにまた御分霊が生まれ、神界から霊界、霊界から幽界とそのつながりは脈々と連なっています。そしてすべての階層の間で連絡を保ちながら、それぞれの受け持ちで奮闘されているわけです。ですからこちらの世界を単純な一つの世界と考えることは間違いです。たとえば邇々芸命様におかれましても、一番奥の神界にてお指図されるだけで、その命令はそれぞれの世界の代表者、つまり御分霊たちにじかに伝わります。お節介なようで恐縮ですが、そこのところのご理解が十分でないと、地上に人類が発生した経緯がよくおわかりいただけないんじゃないかしら。稀薄で、清浄で、ほとんどあるかないかというような光の塊みたいなお体を持った高級な神様が、一足飛びに濃く鈍い物質の世界へ、その御分霊を植え付けることは到底できないのです。神界から霊界、霊界から幽界へと、だんだんそのお体を物質に近づけていったからこそ、初めて地上に人類の発生できる段階へと進むことができたのです。そんな面倒な手続きを踏んでいったにもかかわらず、幽から顕に、肉体のないものからあるものに変化するには、本当に大変なご苦心と、気の遠くなるような年月がかかったそうです。一番困ったのは、物質というものがとかく崩れやすいことで、いろいろ工夫して造ってみても皆途中で流れてしまい、完全な人体はなかなかできなかったそうですよ。人体の発生の順序、方法、年代等につきましても、神様からある程度まで伺っておりますが、今それをお話する時間はありません。いつかまた別の機会にでも改めてお話したいと思います。 とにかく現在の人間という存在が、神様の御分霊を受けて地上に誕生したものであることは間違いありません。少し詳しくお話すると、男女二柱《ふたはしら》の神々がそれぞれの御分霊を出し、その二つが結合して、ここに一つの独立した身魂《みたま》が造られたんです。その際どうして男性、女性の性別が生じたのかは世にも重大な神界の秘事なんですが、要するに男女いずれかが身魂の中枢を受け持つのかで決まっちゃうんだそうです。古典の記録の天地二神制約の段に示された部分をご覧になれば大体の要領がつかめるそうですよ。 さて最初に地上に生まれ出た一人の幼な子は、無論力も弱く、知恵もとぼしく、そのまま一人で無事成長するはずがありません。そんな場合のお世話係がすなわち守護霊という者で、陰から幼な子の保護にあたっているのです。もちろん最初は父母の霊、ことに母の霊(母の霊体そのもの?:訳者注)の熱心な援助がありますが、だんだん成長するにつれてますます守護霊の働きが加わって、最後には父母から離れて立派に独り立ちするわけなんです。ですから生まれた子供の性質や容貌は、ある程度両親に似ていると同時に、また多くの面で守護霊の感化を受け、時には守護霊の再来ではないかというほどのものもいるくらいです。古事記の神代の巻に、豊玉姫からお生まれになったお子様を、妹の玉依姫が養育されたとあるのは、つまりそういった秘事を暗示させているわけです。 言うまでもなく子供の守護霊になられる方は、その子供の肉親と深い因縁の方、いうならば同一系統の方でございまして、男の子には男性の守護霊、女の子には女性の守護霊がつきます。人類が地上に発生した当初は、もっぱら自然霊が守護霊の役目を引き受けていたんだそうですが、時代が過ぎて次第に人霊の数が増えてくると、守護霊もそれらの中から選ばれるようになりました。もちろん例外はあるようですが、現在では数百年から千年、二千年ぐらい前に亡くなった人霊が、主に守護霊として働いているそうです。私なんかは帰幽後四百年あまりなので、そんなに新しい方でもまた古い方でもありません。 これほど複雑な事柄を、私のつたない言葉でそれも簡単にかいつまんでお話しましたので、さぞお分かりにくい点もあるかと恐縮していますが、私の言葉の足りないところはどうかあなた方のほうでご自由に解釈して下さって構いません。 |