'03.05.10(土) 長女の言語教室。教室に通いだした頃に一緒だった子のお母さんがいろいろと悩んでいるらしい。うちの子と同じ年齢の女の子で、同じく広汎性発達障害の診断済み。ただ、まだ自閉症のことが良く分からないとのことなので、何冊か参考書籍を持参。特にオススメの『自閉症スペクトル〜親と専門家のためのガイドブック〜』を読んでもらうことに。 ちょっと文字の多い本ですが(^^;、「薄い本を何冊も読むより、ある程度網羅してある本を最初に読んでしまう方が結局近道」というのが僕の持論なので。それに、たぶんそんなに難しい本じゃないんじゃないかと。でもいつも「カンタンだ」と思って勧めた本を「難しくて分からなかった」とか言われることも多いので、ちょっと心配……。 '03.05.11(日) 長女が音楽教室に入ることを以前に書いたかどうか忘れましたが、その入校式に行ってきました。別にお稽古ごとをやらせようと思ったわけじゃなくて、広汎性発達障害の子供が小学校に入ると、音楽の授業でパニックを起こすことがあるという話を聞いたのがそもそもの切っ掛け。雑多な音が一度に耳に入るのが耐えられないことがあるんだそうです。そんなことになる前に、音楽教室で練習しておくと良いかなと思ったわけです。 入校式の様子は……下の娘が泣き出したので一緒に外に出なければならなくて、どうなふうだったか全然知らないのでした。妻の話によれば良い子で座っていたようですけど……。 '03.05.13(火) 長女がお風呂に入りたがらずパニックに。泣き叫んでどうにも入れそうにないので、僕はとりあえず次女を風呂に入れ、妻に説得を任せました。が、次女が風呂から出る頃になってもまだ泣いています。仕方がない、とにかく無理やり脱衣所に連れ込んで強く抱っこして押さえ込んでやり「大丈夫、大丈夫だよ。おふろに入ろ」と、静かに話しかけているうちにようやく落ち着いてきました。(最初に風呂に誘ってからここまでで約一時間(^^;) パニックを起こしているのに言って聞かせようとしたのが間違いだったとハンセイ。今回の対応のポイントは、場所を移動して気分を変えてやったことと、無理やりにでも抱っこして落ち着かせてやったことでしょう(感覚過敏のあるタイプだと抱っこは最悪の対応になりかねませんが)。声を荒げないこともポイントですね。自閉症の子は「小さな声で言って分からないことは、大きな声で言ったらもっと分からない(^^;」……というか、大きな声で言うとその声の大きさに気を取られてしまって内容が頭に入らなくなるんだそうです。 それで一度風呂に入ってしまえば今度はなかなか出たくなくなるのが面白いところ。先の見通しが利かない自閉症スペクトラムの子供は、今の状態から変化することが苦手で“次に何かする”というのを予め言っておかないと何も出来ません。お風呂に入るのだって実は今日一日のことじゃないんですね。毎日20分はかけて説得して、ようやく大人しく入ってくれてますから(もしくは泣き叫ぶのを無理矢理押し込んでやるか)。 言葉で言うだけじゃなくて絵のカードをボードに貼っておくとか、何かもう一工夫必要なのかもしれません。 '03.07.16(水) 会社をお休みして長女の児童精神科に行ってきました。3ヶ月に一度の定期報告という感じで最近の様子をお話しして、少々のアドバイスをいただいて、診察時間は15分ほど。若い先生であることもあって、頼りになるのかならないのか……という感じではありますが、セカンドオピニオンを求めようにも自閉症を診られるお医者さんは半径40km以内にはいないので(^^;。 '03.07.19(土) 土曜日は長女の言語の教室。先生と一対一ではなく、他の子供と四人のクラスでやっているんですが、その内の一人で小学生の女の子の主治医が杉山登志郎先生。来週、診察に行くんだそうです。 僕もこの人の本は何冊も読んでます。日本の自閉症の第一人者で、初診は二年半待ちとか言われてましたが、今は新しい患者さんは受けていないんだそうで。そういう先生に診てもらえるというのは羨ましいと言うべきか……でも、たびたび診てもらわねばならないのは、やはり状態が悪いからなんだろうな。(情緒不安定なようです) '03.07.28(月) 21時から民放で自閉症の番組が放送。少し前から情報は仕入れていたので、見るために早く帰ってきました。正直、民放の番組では奇妙なところだけをセンセーショナルに取り上げられるんじゃないかと、かなり警戒しながら見たんですが、思ったよりは冷静な内容で一安心。良いとまでは言えずとも、悪くはない番組だったと思います。 自閉症について、育て方などで後天的になるのではなく、先天的な脳機能の障害であるということがキチンと紹介されていたのも良かったと思います。先天的な障害と正しく理解している人が16%しかいないというのは衝撃的でしたが。 三人の自閉症児・者が出ていまして、最初は8歳の中度の男児、次に12歳の重度の男児、最後が18歳の軽度と思われる高機能自閉症の女性。それぞれに程度の違いはありましたが、皆うちの子の様子と通じる部分もあって、なるほど自閉症というので繋がっているんだなぁ、おんなじだなぁと(悲観するのではなく)感じました。 でも欲を言えば、番組中の自閉症児や親の行動に対して専門家の解説をはさんで欲しかったと思います。奇異に見える行動を映して「こんなに大変だ」とか、親子で何かやっているのを「奇跡の○○」みたいなステロタイプな紹介なんかされても仕方がないので、なぜこんな行動になってしまうのかとか、どんな対応をすれば良いのかとか。そういう所まで解説してくれないと、ただ“こんなふうでした”というのを提示されるだけでは普通の人には分からないんじゃないでしょうか。 「なんだか大変なんだねー、よくわからないけど」で終ってしまう。もしくは「かわいそうだとは思うけど、やっぱり怖いよねぇ」とか。 見ていてとても気になったのは、番組中に自閉症者へのマズイ対応の見本みたいなのが何箇所か目に付いたこと。8歳児の電車の中での母親の対応とか(わざとパニックにさせようとしているようにしか見えない。番組用の演出?)、自閉症者を受け入れようとした会社の教育係の対応とか(早口でペラペラと説明しても視覚優位の自閉症者には理解できません)。間違った対応の見本みたいなのが次々出てくるのは気になりました。 あれでふてくされているような様子を放送されたら18歳の自閉症の娘がかわいそう。だって、彼女には他にどうしようもないのに……「あんな顔して睨んで。やっぱりオカシイよ、怖いよ」一般の視聴者の多くは、そんな感想を持ってしまったと思います。……ちょっとだけナレーションでフォローを入れてくれれば……“なぜそうなってしまうのか”を。 (長いので翌日に続く) '03.07.29(火) (続きです) 親子で山に登ったり……何の説明も無くああいうのをテレビで出されると困るんですよね。「先天的な障害と言ったって、やっぱり山に登ったり身体を動かせば良くなるんだ」みたいなデタラメな理解をする人が絶対にいますから。 やはり事前に専門家に相談して、どうやって係われば良いのかというアドバイスを受けるとか、その程度の企画は番組に盛り込んで欲しいところです。そこから放送してくれれば、本人たちにも、テレビを見る自閉症者の親にも参考になったでしょうし、一般視聴者の正しい理解も得られたでしょうに、残念なことでした。 「奇跡の子育て奮戦記」なんてサブタイトルが付いてましたが、こういう認識ではダメなんです。親の立場で言えば奇跡なんて無いんですから。ただただ地道な努力、努力、努力……なんです。なぜだろうという子供の行動を理解するために本や講演会で学んだり、試行錯誤してかかわり方のコツを探ったり、療育に通ったり、日々の関わり合いの中で信頼感を深め合ったり。 番組中の12歳の子供の「初めてのおつかい」だって、ある日突然ひらめいてやらせたわけじゃなくて、あそこに至るには長い年月の積み重ねがあったはず。それを「奇跡の」などという冠を付けて紹介するのは、そうした親子が積み重ねた大切な日々を侮辱するものだと思うんですよね。番組スタッフにしてみれば持ち上げているつもり、なんでしょうけど。 地道な取材を続けて真面目な番組を作ってくれたとは思いますし、悪い番組ではなかったと思いますが(妻は良かったと言ってました)、番組スタッフの良心が伝わるだけに、あと一息頑張って欲しかったかな、と思いました。次は必ずもっと良い番組になると思います。いろいろと書いた不満のほとんどは説明不足、時間が足らないことに帰結するものであって、第二弾、第三弾と出来れば自動的に解消するものですから。次回(があれば)に、本当に期待しています。 #終った番組の批評を長々と書いても、ほとんどの読者には無意味だと思いつつ……(^_^;ゞ #番組のウェブサイトはこちら 03.08.02(土) 言語の教室でくららのちょっとした検査(知能検査?)。ものすごく進歩している事に驚かれ、3月の児童相談所での検査で知能指数が一年で68から100に伸びていたことを話してまた驚かれてしまいました。 参考までに、一緒に勉強している子のうち、ちょっと年上の男の子(小学校低学年?)の学校での様子など聞きました。その子はアスペルガー症候群(コミュニケーションの障害の無い高機能自閉症)で、こだわりなどはあるものの、アスペ特有の理屈っぽい話し方が却って幸いして(?)他の子たちから一目置かれているんだそうです。クラスでの会話でも理詰めで話したり、結構物知りなので「あいつの言うことは聞かないとダメだ」みたいに思われているらしい。家族がアスペの特性を理解して、短く丁寧に論理的に、いろいろと教えてあげている事が、本当に良い方向に活きているということなんでしょう。うちの子に関しても、少し将来への展望が見えた気がするお話でした。 '03.08.23(土) 夜は花火大会がありまして、昨年行ったときはくららが泣いて泣いて大変だったんですが、何を思ったか昨日から本人が「行く」と言い出しました。彼女は花火の音が苦手で、遠くに聞こえただけでも耳を抑えてうずくまるほどなんですが(自閉症スペクトルの症状の一つに特定の音が苦手ということがあります)。花火大会では本当に目前に上がりますから、ものすごい轟音がしますし、くららに耐えられるはずがありません。到底不可能です。 すごい音がすることを話したり、昨年のことを話したり、あれやこれやと説明して、何とか行かないということになりましたが、音さえなければ遠くの花火を見るのは好きな子なので、近くで見ることが出来ないというのは、何とも不憫な感じがしたのでした。 '03.09.10(水) 長女くららは卵をキライと言って食べなかったんですが、僕は「そんなハズはない」と思ってました。で、(僕は帰りが遅かったのでその場にいませんでしたが)今日の夕食は卵料理。くらら曰く「たまごはきらいだから食べられない〜」と。 でも妻が懇切丁寧に、くららが今まで卵を食べられなかったのは「嫌いで食べられなかった」んじゃなくて「(アレルギーで)食べてはいけなかった」からであること、妹が食べていないのも同じ理由であること、小さいときは好きだったことなどを説明してやったんだそうです。すると「そうか」と納得して、ペロッと食べてしまったらしい。 ……あれだよね。R・田中一郎(※)が「殴られると痛いじゃないか」と言って痛がるのと同じなんだろうね。そう思い込んでいるから思い込みに沿った行動をしてしまうと言う(笑)。なぜだか自閉症スペクトルの人間にはそういうことが結構あるらしいので、そういう思い込みを上手にほぐしてやれれば、もっと自由に生きられるんだろうにな、と思ったりします。でも、それが難しいんですけどね。健常者にだってそういう枠はあるわけですし。 ※ゆうきまさみの漫画の主人公。ロボットなので痛みは感じないという設定です。名前の前にRと付いているのは、言うまでもなくアシモフのロボットシリーズの設定。 '03.09.26(金) 長崎の殺人事件の犯人の少年が自閉症圏の発達障害であるという診断が出たとの報道がされているようです。しかし、概ねおざなりで不十分な説明が付記されているだけなので、この障害を持つ人が犯罪を犯しやすいという誤解が広がる恐れがあります。本来、自閉症スペクトル障害(自閉症・アスペルガー症候群・広汎性発達障害)の人のほとんどは、さまざまなルールを守ることに強い拘りを持っています。教えられたことや、自分自身の決め事を頑ななまでに守ろうとするために、むしろ犯罪を犯すことは少ないはずなんですが。 ですから、自閉症スペクトルの人間が犯罪を犯す確率は、実は健常者のそれよりも低いとの統計も出ています。ここ数年、この障害の未成年による重大犯罪が続きましたが、彼らが子供のときにキチンと診断を受け療育を受けてさえいれば、決して起こり得なかったことでした。これらの犯罪の犠牲者、そして犯罪を犯した子供たちも、これらの発達障害に対する日本の療育システムの不備の犠牲者であると言えるのかもしれません。 下記リンクも是非ご覧下さい。 '03.10.05(日) 日曜日は長女のお絵かき教室です。今日の課題は「運動会の絵」。タイムリーですね。 本人は「かけっこを描きたい」とニコニコと張り切って行ったんですが、いざ描こうとすると手が止まってしまいます。「どうやって描いたらいいか分からない」と悲しそうに何度も言っています。どうも難しく考えてしまっているようなので、あれこれアドバイスをしてはみたんですが、どうしても描き始められません。 先生方も「運動会が描けないなら他のものでも良いよ。果物を描こうか?」などと言ってくれたんですが、本人的にはそれではダメらしいんですね。一度「かけっこを描きたい」と思ったら、もうその思いから離れられない……でも描けない、というジレンマで、どうして良いか分からなくなって、とうとう泣き出してしまいました。その後も何度か気分を変えて描き始めさせようとはしたんですが、どうしても無理そう。仕方がないので今日のところは何も描かずに帰ってきてしまいました。 挫折させたままにしてはいけないので、家で夕方から再挑戦。走るポーズをとってやったり、見本を描いてやったりして、ようやく途中まで描くことは出来ました。来週までには完成させて、次に行くときには持っていかせたいと思っています。 '03.10.27(月) くららの保育園の年少さんの子が広汎性発達障害の疑いがあるらしいということで(加配は付いていない子だったかな?)悩んでいるお母さんがいるらしい。どこかで見てもらうべきなのか、とか、見てもらうとしたらどこに行けば良いのか、とか。 とにかく専門家に見てもらわないと、という話を夫婦で。やはり疑いの段階で悩んでいるときが一番辛いので、不安なら専門家に診て貰うべきです。何は無くとも児童相談センターで相談して、必要であれば自閉症スペクトラムを診られる児童精神科のお医者さんを紹介してもらうのが良いでしょうね。障害があるなら早く分かれば分かるほど良いですし、もちろん何でもなければ嬉しいことですから。 よく「個人差が大きいんだから追いつくよ〜」なんて言う人がいますが(うちも散々言われました)無責任極まりないです。3歳時点で明らかに言葉が遅れている子供は、何らかの発達障害を持っている可能性が大きいそうです。ペラペラ喋れるようになったという子供も、もしかしたら実はアスペルガー症候群や学習障害などの障害を持っているのかもしれないわけです。 「大丈夫だよ」なんていう無責任な励ましのせいで対応が遅れたら、子供も可哀想ですし、ずっと不安を引きずることになる親も不幸ですよね。予約してから数ヶ月から2年待ちなどということもありますから、少しでも早く行動したほうが良いということです。 '03.11.03(祝) 娘は「もっと遊びたかった」と言っていますが、妻の実家より帰宅。途中、妻のリクエストで名古屋のデパートへ。妻とありかが買物組。僕とくららは……くららがケーキ屋さんのショーウインドーに釘付けになっていたので、そのケーキ屋さんの列に並ぶことにしました。二人手をつないで並んで、ケーキを選んで、待っている間もワクワクしているのが伝わってきます。長い待ち時間もケーキのために我慢(※)しました(^^)。 ※一般的に自閉症の子供は列に並ぶのが苦手です。先の見通しを立てることが出来ず、あとどれだけ待っていれば良いのか分からないために大きなストレス(分かりやすく言えば、あと何十時間も待たねばならないのじゃないかというような不安)がかかってしまうのだそうです。 ところが、いざケーキが出てくると「たべられない」。どうも何かフワフワした生クリームの感じに拒否反応を感じてしまったようで、どうしても口に入れられないようです(PDD特有のこだわりの反応と思われます)。上に乗っているフルーツだけ一口二口食べましたが、それが精いっぱい。「おいしいから食べてごらん」と、スプーンですくって口に入れてやると、口を開けたまま泣き出してしまいました。 あんなにケーキを楽しみにして嬉しそうにしていたのに、一気に天国から地獄。僕もガッカリです。一緒にケーキを食べて「おいしいね」って言い合えたら嬉しいなと思っていたんですが(^^;、そういうささやかな幸せもなかなか許されないようで……。 娘の障害は受け入れていたつもりだったんですが、改めて「やはりこの子は普通とは違うんだな」と切なくなってしまった、ちょっとした出来事だったのでした。 '03.12.09(火) 妻の話。くららが一人で遊んでいるところを見ていたら、おままごとセットの野菜などをキレイに一列に並べていたそうです。本人に聞くと「だって並んでる方が気持ちがいいんだもの」との事。「おおっ、やっぱこの子は広汎性発達障害だ!」と、ちょっと感動(とは違うか?)してしまったそうです。自閉症スペクトラムの子供(大人でもですが)は物をまっすぐ並べるのが好きな事が多いですから。 そういえば1歳ぐらいの時は、よく薬のビンを床の上でキレイに並べていたよなぁ、と思い出したことでした。いつもは妹にジャマされて並べられないだけで、本当はいつもこうやって遊びかったのかも知れませんね。 |