心霊学研究所
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('06.06.03)


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書 名
キリスト教は邪教です! 現代語訳『アンチクリスト』
著 者
フリードリッヒ・ニーチェ
訳 者
適菜 収
出版社
講談社+α新書
定 価
840円(税込)
発行日
2005/04/21
判 型
新書判
ページ数
181
ISBN
4062723123
評 価
★★★★

 

妻の実家に来ています。暇なので、昨日amazon.co.jpから届いた本を読んでました。

ニーチェによる、キリスト教徹底批判の書『アンチクリスト』の現代語訳です。文中「馬鹿の壁」だの「世界の中心で愛を叫ぶ」だのの言葉が出ているところをみると、これは相当な超訳がされているようではありますが、過去のフォーマルな訳し方の本はこの3倍近い価格になっているようですし、新書でお手軽だったのでとりあえず買ってみました。一般人には(僕も含めて)こっちで十分かな、と。

何となく読み始めたんですが、これ、メチャメチャ面白かったです。もちろんニーチェの思想というのは(皆さんご存じでしょうが)、例えば……

「同情」は、人間の価値を低下させる道具です。そして、その目的は、「あの世」とか「神の救い」といった間違ったものに、人間を向かわせることなのです。(P.24)

なぁんて言ってしまうようなものなので、スピリチュアリストとしては到底認め得ぬ部分は多いのですが、キリスト教とイエスの教えが全く別物であると見抜いているのは(現代ならともかく十九世紀に、ですから)流石ですし、そのキリスト教への罵倒ぶりの激しさは、却ってすがすがしささえ感じるほど?(感じない感じない(^^;)

 イエスという人間のタイプが、長い歴史の中でなぜゆがんでいったのか。(略)キリスト教会が、自分たちの宣伝に都合がいいように、イエスをどんどん変えていったからです。
 『新約聖書』の世界はほとんど病気。社会のクズや神経病患者、知恵遅れが、こっそり皆で集まったような、まるでロシアの小説のような世界なのです。
(P.78)

こんな感じで、これは批判というより罵倒だよねぇ、という表現が頻出(それでも翻訳時に明らかにマズイ表現は省略されているようですが)。この本の執筆翌年にニーチェは発狂したそうですが、いやいや、この時には既に結構危ない状態だったんじゃないかと(汗)。昔のパソ通の時代から哲学系のフォーラム・板・トピが罵倒の巣になっているのが不思議だったんですが、この本を読んで、何となく納得してしまいました(^^;。

ま、実際のところ、僕はそういうのも嫌いじゃないです。ポイントの外れた罵倒はすべて発した本人に帰ってきますし、ニューエイジ系の人達みたいに
「批判はイケマセン。肯定的な姿勢で話し合いをしましょう。LOVE
みたいなことを言った舌の根も乾かぬうちに、その場にいない人間に厭味タラタラ、みたいなのより1000倍は爽やかですもんね。

哲学系の罵倒合戦には「単なる言葉の強さでは傷つかないだろ?」というお互いの信頼感もあると思うんですよね。ニューエイジ系の批判御法度な雰囲気、歯の浮くような誉め会いをしたり、そうかと思ったら過剰な謝罪をしたり、何かもう陰湿な女の園で腹の探り合いという感じがして気持ち悪いですから。

 罪を許すために犠牲になるなんて発想はイエスにはありません。
(略)
 しかし、弟子たちの仕業によって、イエスの教えの中に、「最後の審判」「犠牲死」「復活」といった変なものが混ざってしまった。そして、本当のイエスの教えはどこかに姿をくらましてしまったのです。
 パウロは、そのラビ(ユダヤ教の宗教指導者)のような厚かましさで、この問題を次のように論理化したのです。
「もしキリストが死者の中からよみがえらなかったとしたら、われわれの信仰はむなしい」と。
 本当にお下劣な野郎ですね。「人は死なない」という恥知らずの教義にしてしまったのですから。さらにパウロは、それを報酬として説いたのでした。
(P.99)

パウロへの評価も、スピリチュアリズムの世界でのそれに近いようです(^^)。ま、罵倒表現は気になる人もいるでしょうが、霊の教えになど頼らずとも、突き詰めて考えることによって人間はここまで到達できる(ドグマからの解放とか)ということですかねぇ。現代日本の知識人で言うと(僕の好きな)呉智英に似ている感じ?

この機会に家にある他の本も再読してみようかな。学生時代に読んだときは、「何だコイツ、何も分かってないな。自分自慢ばっか書いてるし」程度の感想で終わってしまったんですよね。余裕が無かったんだろうね。

チャラララッタッタッター♪
「ペーパーバーチはニーチェを読んだ」
「教養が1上がった」
「罵倒力が86上がった」
「好感度が23下がった」

ま、そんな感じで(^^;

初出:『スピリチュアリスト日記』2006.04.22

 


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