心霊学研究所
『欧米心霊旅行記』浅野和三郎著
('02.12.18登録)

第十一信 ボストンにおける心霊実験(5)
楽器発停ならびに物品移動現象


 

 ここにとりあげる楽器発停現象というのは、電気蓄音機が、誰一人手を触れていないのに、ひとりでにスイッチが動いて鳴りはじめた現象で、これは最初から、全く実験のつもりで行われたわけではなく、守護霊が、言ってみれば私の来着を歓迎するつもりで行なっているように見受けられました。私が十七日の午後六時すぎ、初めてクランドン家に着いて二階へ昇りかけると、階段のすぐそばに置いてある蓄音機がある行進曲を奏し始めたのを手始めとして、その後、私がそこを通るたびごとに、きまって鳴り出したのでした。したがって十七日の間に総計六度鳴りました。実験的な立場からは、さして価値ある現象とは申しかねますが、あまりに手際《てぎわ》のよい仕事だったので、ここに付記しておく次第です。

 次に物品移動現象----これは十八日午後九時頃、実験室にての実験です。実験物は、燐光性《りんこうせい》(訳注:暗所で青白く光る)の光帯をたくさん付けてある笊《ザル》、造花の類で、それらはあらかじめテーブルの上に用意してあります。もちろん霊媒のマージャリィは入神状態に入り、その手足などは、私どもの手で厳重に拘束されています。やがて赤燈を消しますと、守護霊のウォルターが出現し、さっそくそのザルや造花を取り上げ、前後左右にグルグル振り回します。ドウ見てもウォルターは、自分の手足だけを物質化し、われわれ人間が手でにぎるのと同様の方法をとっているとしか考えられません。

「ウォルターさん、その造花を私の膝に投げてください」

 私がそう注文すると、例の元気な声で、

「オール、ライト」

と答えて、ポンと造花を膝の上に投げてくれました。

 そんな注文を発した者が、私のほかにも数人ありました。立会人一同キャアキャア!と言って大騒ぎです。一座の光景は、しかつめらしい心霊実験と言うよりも、むしろ暗闇の中で、仕掛け花火でも見物しているといった形でした。

 造花やザルが振り回される距離は、霊媒の身辺から、約五フィート(約1.5m)までぐらいのように見受けられました。

 


前ページ目次次ページ

心霊学研究所トップページ