心霊学研究所
『欧米心霊旅行記』浅野和三郎著
('03.01.08登録)
第十一信 ボストンにおける心霊実験(7)
対照通信
指紋作製に劣らず、今回の実験で異彩をはなったのは、三人の霊媒によって共同でおこなわれた対照通信でした。参加した霊媒は、前記の通りマージャリィ、ヴァリアンタイン、およびリッツェルマン夫人の三人でした。実験は十七、十八日の両夜にまたがり、また材料の提供者は、私ならびにロージャース博士の両人でした。 十七日の午後八時半、三人の霊媒がおのおのその位置につきます。クランドン博士邸の実験室に座ったのがマージャリー、ならびにヴァリアンタインの両人。15マイル(約24km)をへだてたケンブリッジの自邸にいるのがリッツェルマン夫人。相互間の連絡は電話でおこない、これにはロージャース博士があたりました。 私の作成した実験材料は十四枚の厚紙に、おのおの一から十四までの数字を漢字で書き、それをゴチャゴチャにかきまぜて自分のポケットに入れておきました。ロージャース博士のは、未見の雑誌、ならびに百枚の日めくりで、どれも助手を使って封筒に入れさせたのを持ってきました。 やがて一同実験室に着席。霊媒たちの手足を拘束した上で、燈火を消しました。まもなくウォルターの声が、暗いところから呼びかけてきました。「アサノさん、あなたのポケットの厚紙を、一枚づつ出してください」 それで私は手当たりしだいに、まず厚紙の一枚をポケットから引き出してウォルターに渡しました。ウォルターは暗い中でこれを受け取り、約十秒後に、分かったと言って私に戻します。そのようにすること四回、つまり私は合計四枚の厚紙をウォルターに渡したわけです。(写真参照) ウォルターは何らかの方法で、これを三人の霊媒に伝達(または印象)したのですが、15マイルの彼方にひかえたリッツエルマン夫人に伝達するときには、およそ一、二分の間、実験室から消え去ったようすでした。 私の数字伝達がすんでから、今度はロージャース博士が持っていた封筒をひらき、暗中で手当たりしだいに雑誌の表紙、広告などを四枚ほど引き破り、また日めくりを手当たりしだいに三枚ほど引き抜いてウォルターに渡し、ウォルターがいちいちこれを受け取って、三人の霊媒に何らかの方法で伝達したのは、私の場合と同じでした。 ウォルターから通信終了と聞いてから、われわれはいったん座を閉じ、ゾロゾロ階下の書斎に集合しました。そしてマージャリーとヴァリアンタインは別々のテーブルで、ウォルターからの通信を自動的に書きました。
次にリッツェルマン夫人には、さっそくロージャース博士が電話をかけて答えを聞くと、彼女の目に印象された文字は、意味は不明だが四、十、十三、三であると説明し、なお後から手紙でその文字を書いて報告してきました。 以上三人の答の中で、いちばん詳しいのはマージャリーので全部的中。ただし雑誌の文字は大きな文字だけ分かり、小さな文字は分かりませんでした。ヴァリアンタインがこれにつぎ、リッツェルマン夫人は、単に私の提出した四、十、十三、三の数字を答えられただけでした。 この驚くべき実験が、いかなる意味を持つのかは詳しく説明する必要もないでしょう。
こんなことを考える時に、どうしてもある個性を有する霊魂の存在(たとえばウォルター)を認めることが合理的なようです。 翌十八日の晩にはリッツェルマン夫人をクランドン邱に招いて、三人同室でほぼ同様の実験を行ないましたが、その結果もほぼ同じでしたから、簡単にここでは省略します。 |